「心をつかむ」

——社会生活で最も大切な力の磨き方——

                             弁護士 川原俊明

 

欠けているために、紛争の原因となり、同時に、私たちが、その紛争を解決するために必要なこと。

社会生活を円滑に、そして実りあるものにするために必要不可欠なのは、「心をつかむ力」だと考えます。

これは他者の共感を得たり、信頼を築いたりするための基本であり、単なるテクニックではなく、人としての在り方に深く関わっているものです。

ここでは、三つの観点からその秘訣を考えてみたいと思います。

まず人間関係の観点では、「相手に関心を持つこと」が何よりも大切です。

人は、自分を理解しようとしてくれる人に対して心を開きます。

「聞き上手」であることや、相手の立場や背景を想像しながら対話する姿勢が、信頼を得る第一歩となります。

言葉の表面だけではなく、その奥にある気持ちに目を向けることが、心をつかむ秘訣だと言えるでしょう。

次に仕事やビジネスの場面においては、「信頼」と「価値提供」が重要です。

たとえ優れたアイデアや実績があっても、相手に安心感を与えることができなければ、共感や支持は得られません。

相手のニーズを正確に把握し、それに応える姿勢や誠実な対応、そして時には感動や驚きを与えるような提案ができれば、自然と相手の心を引き寄せることができます。

心をつかむとは、すなわち「相手を大切にする仕事」をすることだと思います。

最後に自己表現や自己成長の観点では、「自分らしさ」と「情熱」が人の心を動かします。

作られた言葉や振る舞いではなく、内側から湧き出る思いや信念は、相手の心に深く響くものです。

人は「何を言ったか」よりも「どんな思いで語ったか」に心を動かされるのです。

失敗や弱さすらも包み隠さず語ることで、人間らしさが伝わり、心が通い合います。

このように、「心をつかむ」ことは、他者を思いやる力、信頼を築く姿勢、そして自分を真っ直ぐに表現する勇気にかかっていると思います。

テクニックよりも、まずは自分の姿勢を見つめ直すこと。

それこそが、社会生活において最も大切なことだと、私は考えます。