第二回万博研修記録
弁護士 川原俊明
2025年7月11日、私たち法律事務所の有志メンバーは業務を少し早めに切り上げ、再び大阪・夢洲(ゆめしま)の万博会場に向かいました。
これは、去る5月22日に実施した第一回研修に続く第二回目の研修であり、日頃の業務に励むメンバーの慰労と親睦を兼ねた取り組みです。
当日は、夕方5時に現地集合となりましたが、真夏の太陽はまだ勢いを保っており、会場は蒸し暑さが残る中でのスタートでした。それでも、混雑は前回ほどではなく、スムーズに入場できたことが幸いでした。
今回の目的地は「オーストリア」「スイス」「フランス」
前回の研修では、日本やアジア圏のパビリオンを中心に回りましたが、今回はヨーロッパの文化と歴史を体感するべく、オーストリア、スイス、フランスのパビリオンを訪れることにいたしました。
オーストリア館:音楽と技術が響き合う国
最初に訪れたのは、音楽の都とも称されるオーストリア館です。
モーツァルトやシューベルト、マーラーなど世界的な音楽家を輩出したこの国は、芸術と科学の融合を軸にした展示を行っていました。
会場内では、ピアノの自動演奏に合わせて、オーストリアゆかりの音楽家の紹介が映像と音響で展開されており、デジタル技術によって過去と未来が重なり合う演出がなされていました。
また、日本とオーストリアとの交流の歴史についても、1899年の日墺修好通商航海条約の締結を起点に、芸術や経済、学術の分野における連携の紹介もあり、法曹関係者としても興味深く拝見いたしました。
オーストリアは、ハプスブルク帝国というヨーロッパ最大の王朝の中心であった歴史を持つだけでなく、ナチス・ドイツに併合された暗い時代も経て、今や中立国として文化的影響力を発信しています。その背景を知った上での展示は、より深い理解を促すものでした。
スイス館:中立国が語る「物語」の力
次に訪れたのは、永世中立国スイスのパビリオンです。
スイスは、アルプスの美しい自然と金融・科学技術の先進国というイメージがありますが、今回の展示では「物語の力」と「ビジュアルアート」に焦点が当てられていました。
展示の中心には、切り絵風のアニメーションがあり、日本の作家・滝平二郎氏の切り絵作品を彷彿とさせるビジュアルに、多くの来場者が足を止めていました。
物語の中には、スイス文学に登場する「アルプスの少女ハイジ」や、民間伝承に基づくキャラクターが次々と現れ、観る者を優しく包み込むような演出が施されていました。
また、スイスの国是である「永世中立」の歴史にも触れられ、第一次・第二次世界大戦中も武力衝突を回避してきた外交姿勢の背景が、アートとナレーションで解説されていました。
法と平和の共存という観点でも、スイスの立場は深い示唆を与えてくれます。
フランス館:文化とブランドの融合
続いて足を運んだのは、フランス館です。
さすが「文化の国」とも呼ばれるフランスらしく、展示には高い芸術性と洗練された空間演出が施されておりました。
特に印象的だったのは、フランスが誇るファッションブランド「ルイ・ヴィトン」を彷彿とさせるエリアの配置です。
まるで高級ブティックのような内装には、アート作品とデザイン商品が融合され、視覚的にも非常に魅力的な空間でした。
フランスは、近代人権思想の源流である「フランス革命」や「人権宣言」を生み出した国でもあり、芸術と政治思想が密接に結びついてきた背景があります。
展示の中にも「自由・平等・博愛」の精神が各所に表現されており、来場者にその価値観を体感させる仕掛けが巧みに組まれていました。
トルクメニスタン館:知られざる国の姿
その後、私たちは珍しい国のパビリオンにも足を運びました。観光ビザの取得が非常に難しい国、トルクメニスタンです。
中東と中央アジアの交差点に位置するこの国は、旧ソビエト連邦の構成国の一つであり、1991年に独立を果たしました。トルクメニスタンは、絨毯や天然ガス・石油といった資源に恵まれた国であり、パビリオンの外壁全体が大画像で覆われていて、そのスケール感とデザイン性には驚かされました。
会場では、絢爛なトルクメン絨毯の織り方や、伝統衣装をまとったダンサーの姿が映像で再現され、まるで異国の街角に迷い込んだかのような体験ができました。政治的には閉鎖的とされることもある国ですが、こうして文化の面から平和的に紹介されることは、万博の持つ大きな意義の一つだと改めて感じました。
食とエンタメ:韓国料理とドローンショー
パビリオン見学の後は、夕食を兼ねて韓国料理のブースへ。キンキンに冷えたビールと熱々のビビンバが疲れた身体に染み渡り、自然と会話も弾みました。
そして最後には、夜空に舞うドローンショーを鑑賞いたしました。数こそ多くはありませんでしたが、ドローンたちは華やかな光を放ち、まるで空中で舞う花火のように自由に動いていました。爆発音のない光の演出は、平和的な技術の象徴のように思え、戦火の絶えない世界情勢を思うと、このような演出が世界中で広まってほしいと願うばかりです。
また、地上では水上ショーが開催されており、レーザー光線と噴水が織りなす幻想的な空間は、まるで未来都市の祝祭を思わせる光景でした。
おわりに:親睦と知の融合
こうして、第二回の万博研修も無事に終了いたしました。今回は、第一回よりもやや自由度の高いスケジュールで動いたこともあり、各自が興味のある国を深く味わうことができた点が特に印象に残ります。
また、各国の歴史、文化、政治、技術の進展を学びながら、日本とどのような関係を築いてきたか、あるいは今後築いていくべきかについて考える良い機会ともなりました。
このような機会を提供してくれた事務局の皆さんには、心より感謝申し上げます。
日常の法律業務を離れたこのような時間こそが、より良いチームワークと創造性を育て、未来の法律事務所の可能性を広げていく原動力となると、私は確信しています。
今後もこのような「学び」と「癒やし」と「交流」の場を継続し、法律事務所として社会により良い価値を提供し続けられるよう、邁進してまいります。