七夕の不思議な出会い🌠

銀河鉄道と切符売り

七夕の夜、終電を逃した私は、ひとけのない駅でぼんやりしていた。
「終電は終わりましたよ」――声の主は、駅の片隅に立つ、年季の入った切符売りだった。

「ここから、銀河鉄道に乗れますよ」
冗談かと思ったが、男の目は本気だ。ふと手渡された切符には、「天の川・片道」とある。

「乗れば、願いが一つ叶います」
半信半疑で改札を抜けると、ホームには、青白く光る汽車。乗り込んだ瞬間、風景が夜空に変わった。

隣の席には、幼いころに亡くなった祖母が。
「会いたかったよ」涙がこぼれる。祖母は笑い、「あんた、よう来たねぇ」

夢か幻か、朝になると私は自室で目覚めていた。枕元には、小さな紙切れ――
「また、来年も会いましょう。七夕限定」

 

七夕の短冊バトル

地元の七夕祭り。短冊に願いを書くのが恒例行事だ。私は「運命の人と出会いたい」と書いた。
すると隣の短冊には、「今年もまた、この人に会えますように」と書かれている。

ん?と顔を上げると、そこには毎年この祭りでだけ顔を合わせる男性の姿。
名前も知らない。だけど、短冊を見てお互いに気づいたのだ。

「君も、毎年願ってたの?」
「うん…でも、たまには叶えてもらおうかと思って」
笑いながら、彼は言った。「来年は、短冊いらんな」

手をつないだその瞬間、強風が吹き、私の短冊が宙に舞った。
彼が追いかける。が、木に引っかかる。

「もうええやん。オチたの、俺やし」
彼が照れくさそうに言った瞬間、私の胸の短冊にも“ドキン”と書かれていた。

 

星降るカフェと嘘つきバリスタ

駅前のカフェ。七夕限定の「星空ラテ」を注文すると、バリスタの青年が言った。
「これ、飲むと願い事、ひとつ叶います」

「また、七夕商法?」笑いながら口にすると、確かにラテは星型のシュガーが浮いて綺麗だった。

何の気なしに「昔好きだった人に、もう一度だけ会いたい」とつぶやいた。
その瞬間、店のドアが鳴り、驚くほど懐かしい顔が現れた。

大学時代に告白できなかった相手。彼は、こちらに気づいて歩み寄る。

「久しぶりだね、偶然ここで会うなんて」
動揺している私に、彼が一言。

「…あの店員さんに呼ばれたんだ。『七夕のラテを、彼女に出してほしい』って」

振り返ると、バリスタが片目をつぶっていた。
やっぱり彼は、嘘つきだった。でもその嘘が、今年一番の本当になった。