子供の日、バラに心を奪われ、青春を続ける —未来へ歩み続ける法律事務所を目指して—

五月五日、子供の日。

爽やかな風が吹き抜ける朝、中之島公園のバラ園には、色とりどりの花々が咲き始めています。赤、白、黄色、ピンク——それぞれが誇らしげに咲き、春から初夏へと向かう大阪の街に、柔らかな彩りを与えています。

 私は今、この季節の変化を毎朝楽しみながら、天満橋駅から法律事務所まで歩いています。
この散策の時間は、単なる通勤ではありません。
一日の始まりに、自分の心を整え、未来を考え、人として成長し続けるための大切な時間となっています。 

思い返せば、私の人生は、いつも「歩くこと」とともにありました。

子供のころ、私は香里園から天満橋にあった追手門学院小学校へ通っていました。
まだ小さな身体に、大きなランドセル。
満員の京阪電車に揺られながら、自営業者であった父に毎日のように連れて行ってもらっていました。

今のように便利な時代ではありません。
香里園駅の周辺には、まだ田んぼが広がり、萱島付近には蓮根畑が残っていました。
空には大きな雲が流れ、季節ごとの匂いが街にありました。 

京阪電車には、姉たちも利用していた聖母女学院専用列車が走り、子供たちの笑い声が車内に響いていました。
どこかのんびりとしていて、人々の心にも余裕があった時代です。 

当時の天満橋駅は終点駅。
そこから大阪の街へ向かう景色は、幼い私にとって、大きな世界への入り口でした。

そして今。
私は、その天満橋の近くで法律事務所を営んでいます。

人生とは不思議なものです。
子供のころ、父に手を引かれながら歩いた街を、今は自分の足で歩いている。
しかも、依頼者の人生を支える仕事をしながら。

 私は今、天満橋駅から八軒屋を出発し、大川沿いを歩き、中之島公園を抜け、淀屋橋近くの事務所へ向かっています。
春には満開の桜が咲き誇り、水面に映る花びらを見ながら歩くだけで、心が洗われる思いがしました。

 そして五月。
今度はバラが主役です。


実は、以前の私は、北浜駅から地下道を通り、効率だけを考えて、黙々と事務所へ向かっていました。
雨にも濡れず、時間も正確。
合理的と言えば合理的です。 

しかし、ある日、事務所のスタッフからこう言われました。

「先生、せっかく中之島公園があるのに、地下ばかり歩くのはもったいないですよ。」

 その一言に、私はハッとしました。

 私は法律家として、多くの紛争を見つめ、理論を積み重ね、最善の解決を追求してきました。
しかし一方で、自分自身の視野が狭くなっていたのではないか。
効率や合理性ばかりを優先し、人生の美しさや、人の心の豊かさを見落としていたのではないか。

そう気付かされたのです。

それ以来、私は地下道ではなく、空の下を歩くようになりました。

新緑の並木道。
川面を渡る風。
朝日に輝くバラ。

季節ごとに表情を変える大阪の街。 

歩いてみて初めて見える景色がありました。

法律の世界も同じです。
一方向からだけ物事を見ていては、本当の解決には辿り着けません。

依頼者の立場。
相手方の事情。
家族の想い。
企業の未来。
子供たちの人生。
社会全体への影響。

本当の解決とは、単に勝つことだけではなく、その先にある「未来」を作ることなのだと思います。

私は長年、弁護士として多くの案件に関わってきました。
離婚問題、相続、不動産紛争、企業法務、労働問題、SNSトラブル――。

時代は大きく変わりました。
そして今、その変化の速度は、かつてないほど速くなっています。

 AIの進化。
価値観の多様化。
働き方の変化。
家族の在り方の変化。
人間関係の希薄化。

これからの法律事務所は、単なる「トラブル処理機関」では生き残れない時代になるでしょう。

私は、法律事務所の未来像を、もっと人間らしいものにしたいと考えています。 

困った人が、気軽に立ち寄れる場所。
緊張ではなく、安心を感じられる空間。
「こんなことを相談していいのだろうか」と悩む人に対し、「大丈夫ですよ、一緒に考えましょう」と言える場所。 

そして、AI時代だからこそ、人の心を理解できる法律事務所。

 法律知識だけなら、これからはAIが瞬時に答えを示す時代になります。
しかし、依頼者が本当に求めているものは、単なる条文や判例の説明だけではありません。

「自分の気持ちを分かってほしい」
「未来への希望を持ちたい」
「孤独ではないと思いたい」

 そこに応えることができるかどうか。
それが、これからの法律事務所に求められる本質だと思っています。

だからこそ、私たちも成長し続けなければなりません。

私は今でも、新しいことを学び続けています。
AIも積極的に活用しています。
SNSにも挑戦しています。
若い弁護士たちとも議論を重ねています。 

しかし、どれだけ時代が変わっても、絶対に変えてはいけないものがあります。

それは、「人を大切にする心」です。

朝、中之島公園を歩きながら、イヤホンから流れるZARDの歌声を聴いていると、青春とは年齢ではないのだと感じます。

何かに感動できる心。
未来を信じる気持ち。
新しい挑戦を恐れない勇気。 

それがある限り、人は青春を生き続けることができる。

バラを見て感動する心。
桜を見て心が洗われる感覚。
人の笑顔を守りたいと思う気持ち。

それらを失わない限り、人生はいつまでも前向きであり続けられるのだと思います。

子供の日。
街では子供たちの笑い声が響いています。

子供たちは未来そのものです。
その未来を守るためにも、社会はもっと優しく、もっと安心できる場所にならなければなりません。

法律は、人を縛るためだけにあるのではありません。
人を守り、人を支え、未来を作るために存在しています。

そして法律事務所もまた、人々が人生を諦めないための「希望の場所」でありたい。

私は、これからも歩き続けます。

新緑の中を。
バラの咲く道を。
未来へ向かって。 


青春とは、若さではありません。
挑戦をやめない心です。 

これからも、依頼者の笑顔のために。
新しい未来社会のために。
そして、人の心に寄り添える法律事務所であり続けるために。 

今日も私は、大阪の街を歩きながら、新しい一日を迎えています。

2026年5月5日  弁護士 川原俊明