星のブランコ — 森に学ぶ「共生」ということ —

大阪・交野市の私市へハイキングに出かけ、ほしだ園地にある「星のブランコ」を訪ねてきました。

まず、この名前がいい。

「星のブランコ」。

何とも夢があり、空に向かって歩いていくような響きがあります。

星のブランコは、全長280メートル、最大地上高約50メートルという、国内でも最大級の木床版の吊り橋です。


「吊り橋」と聞くと、歩くたびに左右に大きく揺れる橋を想像しますが、実際にはしっかりとした構造で、思った以上に安心して渡ることができます。

そして、橋の上から眺める景色が素晴らしい。

眼下には、幾重にも重なる緑の森。
遠くには街並みが広がり、日常生活の中ではなかなか見ることのできない雄大な風景を楽しむことができます。

大阪という大都会のすぐ近くに、これほど豊かな自然が残されている。
そのこと自体が驚きでした。

「こんな身近なところに、こんな景色があったのか」

素直に、感動しました。

大雨が残した爪痕

しかし、今回のハイキングでは、自然の美しさだけを見たわけではありません。

道中、今年6月28日の大雨の影響で、山道の何か所もが崩れ、通行禁止になっていました。
予定していた道を歩くことができず、やむなく迂回して自動車道を経由しながら目的地を目指しました。

山の斜面が崩れ、道が失われている光景を見ると、自然は決して人間の思いどおりになるものではないことを改めて感じます。

私たちは道路を造り、橋を架け、建物を建て、科学技術を発達させてきました。
それでも、大雨が降れば山は崩れ、川は姿を変える。

人間がどれほど知恵を身につけても、自然そのものを支配することなどできないのです。

一方、山の中へ入っていけば、そこには変わらず緑の木々があり、川のせせらぎがありました。
鳥の声が聞こえ、木々の間から光が差し込む。

歩いているうちに、都会での日常生活の中では忘れていた感覚が、少しずつ戻ってくるように思いました。

私たちは自然から離れて生きているのではない。自然の中で、自然に守られながら、生かされている。
星のブランコを歩きながら、そんな当たり前のことを、改めて感じました。

森には「共生」がある

森を眺めていると、不思議なことに気づきます。
そこには、一本の木だけが存在しているわけではありません。

大きな木もあれば、小さな木もある。
日の当たる場所で伸びる木もあれば、大木の陰で静かに生きる草花もある。
鳥がいて、虫がいて、微生物がいて、川が流れている。

それぞれが違う役割を持ちながら、一つの森をつくっています。

もちろん、自然界にも生存競争はあるのでしょう。
しかし、それだけでは森は成り立ちません。

違うものが同じ場所に存在し、互いに影響し合いながら、一つの世界をつくっている。
そこには、人間社会が学ぶべき「共生」の姿があります。

人間は進歩した。しかし――
人間は長い歴史の中で知恵を身につけ、文明を発展させてきました。

法律をつくり、社会制度を整え、科学を発達させ、昔では考えられないほど便利で豊かな社会を築きました。

ところが、知恵を身につけたはずの人間が、欲を持ち、その欲がぶつかることで争いを起こします。

もっと自分が得をしたい。
自分だけが正しい。
相手には譲りたくない。

その思いが強くなりすぎると、家族同士でも、会社の中でも、企業同士でも、時には国と国との間でも争いになります。

私は弁護士として、長年、さまざまな争いに向き合ってきました。
そこでは法律によって白黒をつけなければならないこともあります。

しかし、法律だけですべてが解決するわけではありません。
相手の立場を少しだけ考える。

自分とは違う考え方が存在することを認める。
どこまでなら譲ることができるのかを考える。

そして、お互いが生きていける場所を探す。
争いを理性によって収めるためには、そうした姿勢が必要なのだと思います。

それこそが、人間社会における「共生」ではないでしょうか。

星のブランコから見えたもの

高さのある吊り橋の上から森を眺めていると、人間社会で起きている日々の争いが、ほんの少し小さなものに見えてきます。

何十年、何百年と生き続ける木々。
その間を流れ続ける川。
そして、その自然の中で生かされている私たち人間。

人間は大変な知恵を手に入れました。
だからこそ、その知恵を、相手を打ち負かすためだけに使うのではなく、共に生きるために使わなければならない。

自然を守りながら生きる。
人と人とが違いを認めながら生きる。

争いが起きたときにも、感情だけに流されず、理性によって解決の道を探す。

星のブランコと、その周囲に広がる雄大な森は、そんなことを静かに教えてくれているように感じました。

都会での慌ただしい日常を少し離れ、森の中を歩く。
それだけで、人間は自然の一部にすぎないということを思い出させてくれます。

そして同時に、「共に生きる」という、とても単純で、とても難しいことの大切さにも気づかされます。

星のブランコ。

素晴らしい景色を見ることができた一日でした。
しかし、私にとって一番心に残ったのは、その景色の向こうに広がる森が教えてくれた、

「共生してこそ、豊かな世界になる」

ということでした。

2026.8.22 弁護士 川原俊明