未来を創る司法の役割 ― 選択的夫婦別姓制度の実現を目指す違憲訴訟に込めた私たちの志 ―
弁護士法人 川原総合法律事務所
私たちは今、歴史の転換点に立っています。
社会の価値観は大きく変化し、人々の生き方は多様化しました。
しかし、その変化に法制度が十分に追いついているとは言えません。
その象徴の一つが、「選択的夫婦別姓制度」がいまだに実現していないという現実です。
当事務所は、この問題を単なる家族制度の一論点としてではなく、個人の尊厳、法の下の平等、そして未来社会のあり方を問う根源的課題として捉えています。
そして私たちは、司法の場において、この問題に真正面から向き合うことを決意し、違憲訴訟を提起しました。
大阪地方裁判所 令和8(行ウ)第4号
これは政治運動ではありません。
これは、司法に課せられた本来の役割を果たすための、法的・社会的責務です。
司法の役割とは何か
― 国民の声を、憲法の言葉として社会に刻むこと ―
日本国憲法は、三権分立を基本原理としています。
立法は国会、行政は内閣、そして司法は裁判所。
この三つの権力は互いに抑制と均衡を保ちながら、国民の自由と権利を守るために存在しています。
司法の役割は、法律を機械的に適用することにとどまりません。
現実の社会に生きる国民の声を受け止め、それが憲法の理念に照らして正当であるかを判断し、必要であれば立法や行政に対して明確なメッセージを発すること—
これこそが、司法の本質的使命です。
違憲訴訟とは、まさにそのために存在する制度です。
多数派の沈黙や、政治的配慮の陰で見過ごされがちな不利益を、司法の言葉で可視化し、社会全体に問いを投げかける。
それは、民主主義を支える重要な営みです。
明治の家族制度から、未来の共生社会へ
― 時代に合わなくなった「当たり前」を問い直す ―
現在の戸籍制度と夫婦同氏原則は、明治期に形成された家族制度を色濃く引き継いでいます。
そこには、家を単位とし、男性を中心に据えた封建的価値観が根底にあります。
しかし、現代社会はもはやその前提を共有していません。
女性は教育を受け、職業を持ち、社会のあらゆる分野で能力を発揮しています。
結婚後も自己の人格や職業的アイデンティティを維持したいと願うことは、極めて自然で合理的な感情です。
にもかかわらず、日本では結婚に際し、どちらか一方が必ず改姓を強いられます。
そして、その大多数は女性です。
これは、形式的には「平等」に見えても、実質的には女性に一方的な不利益を課す制度であると言わざるを得ません。
数字が語る民意、世界が示す常識
国内の各種アンケート調査においても、選択的夫婦別姓制度に賛成する意見はすでに多数派となっています。
特に若い世代では、その支持は圧倒的です。
また、国際社会に目を向ければ、日本の立ち位置はさらに明確になります。
主要先進国の中で、夫婦同氏を法律で強制している国は、ほぼ日本だけです。
世界の大半の国々では、結婚後の氏の選択は個人の自由であり、法制度上、何の問題もなく受け入れられています。
それにもかかわらず、日本では「伝統」や「家族の一体感」といった抽象的概念が、制度改革を阻んできました。
しかし、伝統とは守るべきものと同時に、時代に応じて更新されるべきものでもあります。
司法から社会を動かすということ
― 政治から距離を保ち、憲法に忠実であるために ―
当事務所が違憲訴訟という手段を選んだ理由は明確です。
私たちは政治的立場を取らず、特定の政党や思想に与することもありません。
あくまで、憲法と法の理念に忠実でありたいと考えています。
司法の立場から社会を見つめ、現実と憲法との間に生じている歪みを是正する。
それは、政治と対立することではなく、民主主義を補完する行為です。
裁判所の判断は、直ちに制度を変えるとは限りません。
しかし、その判断は確実に社会の意識を動かし、立法の方向性に影響を与えます。
これまでの多くの人権保障の歴史が、それを証明しています。
私たちが目指す未来
― 一人ひとりが尊重される社会へ ―
選択的夫婦別姓制度の実現は、誰かに何かを強制するものではありません。
同じ姓を名乗りたい人は、これまでどおりそうすればよい。
ただ、「別の選択肢も認める」という、それだけのことです。
それは、多様な生き方を肯定し、個人の尊厳を真に尊重する社会への一歩です。
そして、女性が不利益を被る構造を是正し、男女が対等な立場で人生を選択できる社会を築くことにつながります。
当事務所は、司法の力を信じています。
そして、法が社会を照らし、未来を切り拓く道標となることを信じています。
この訴訟は、今を生きる私たちだけのためのものではありません。
次の世代、その次の世代へと続く、日本社会の未来のための挑戦です。
私たちは、これからも司法の現場に立ち続けます。
国民の声に耳を傾け、憲法の理念を現実の社会に根付かせるために。
未来を創る司法の役割を、誠実に、粘り強く果たしていくことを、ここに宣言します。

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