後見人制度がなくなる? ~「補助制度」への一本化で何が変わるのか~

弁護士法人 川原総合法律事務所
     弁護士 川原俊明

成年後見制度は、高齢化社会の進展に伴い、認知症や知的障害、精神障害などにより判断能力が低下した方の財産や生活を守るため、2000年に導入されました。

現在は、「後見」「保佐」「補助」の3つの類型があります。しかし、この制度は約25年間運用される中で、「一度利用すると亡くなるまで終われない」「本人の意思が十分尊重されない」「必要以上に権限が広い」といった問題点が指摘されてきました。

そこで今回、成年後見制度は大きな見直しが行われ、「後見」「保佐」を廃止し、「補助制度」を中心とした柔軟な制度へ一本化する方向で法改正が進められています。

 

新制度のメリット

最大の特徴は、「必要な支援だけを受ける」という考え方です。

これまでの成年後見では、後見人が選任されると、本人ができることまで制限される場合がありました。

例えば、認知症になった方が自宅を売却するために成年後見制度を利用すると、その後も亡くなるまで後見人が財産管理を続けることになります。

新制度では、「自宅売却だけ」「遺産分割だけ」「施設入所契約だけ」など、その目的に応じて必要な範囲だけ補助人に権限を与えることができるようになります。

さらに、その目的が終了すれば制度を終了できる方向で見直されています。

つまり、「必要な時だけ利用する制度」へと大きく変わろうとしているのです。

また、本人が判断できることは本人自身が決め、困難な部分だけ補助人が支援するという「自己決定権」を重視した制度設計になります。

国連からも、日本の成年後見制度は本人の権利制限が強すぎるとの指摘を受けており、今回の改正はこうした国際的な流れにも沿ったものです。

一方で心配される点(デメリット)

もっとも、新制度には課題もあります。

第一に、支援内容を個別に決めるため、家庭裁判所での審理がこれまで以上に複雑になる可能性があります。

第二に、補助人の権限が限定されるため、悪質商法などへの対応が遅れるおそれがあります。

従来の成年後見人は包括的な取消権を有していましたが、新制度では権限外の契約については十分な対応ができない場面も考えられます。

第三に、家族間で「どこまで補助人の権限を認めるか」を巡る争いが増える可能性があります。

本人の自由を尊重する反面、家族や親族の意見が分かれるケースも予想されます。

弁護士としての見解

私は、この改正は全体として歓迎すべきものと考えています。

これまで成年後見制度は、「一度利用すると一生やめられない」というイメージが強く、利用をためらう方が少なくありませんでした。

しかし、新制度では必要な期間だけ利用できるため、制度利用への心理的なハードルは大きく下がるでしょう。

もっとも、高齢者を狙う特殊詐欺や悪質な訪問販売が増加する中で、本人保護とのバランスをどのように図るかが今後の大きな課題となります。

また、制度が変わっても、「認知症になる前の準備」が最も重要であることは変わりません。

任意後見契約や家族信託、遺言書などを活用し、元気なうちから財産管理の方法を決めておくことが、ご本人とご家族双方にとって安心につながります。

制度は変わりますが、「本人の尊厳を守りながら、必要な支援を受ける」という基本理念は変わりません。

これからは、「守る制度」から「支える制度」へ――成年後見制度は、そのような新しい時代を迎えようとしています。

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