ショウブを見て考えたこと 城北菖蒲園を巡るハイキングで。
令和7年6月7日(土曜日)、私たち14名の仲間たちは、大阪城公園から城北菖蒲園を中心としたハイキングに出かけました。
この日は、晴天にも恵まれ、初夏の陽気が心地よく感じられる絶好のハイキング日和でした。
集合場所は、JR大阪城公園駅。大阪城のすぐそばに位置するこの駅は、都会の喧騒の中にあって、緑と歴史に囲まれた特別な空間への入り口です。
駅に到着した私たちは、軽く準備運動を済ませ、大阪城の城内散策からスタートしました。
久しぶりに訪れた大阪城の城内は、まさに新緑の季節。
青々と茂った木々が心を癒し、歴史の象徴とも言える天守閣が堂々とそびえ立つ姿に、私たちは自然と足を止めて見入ってしまいました。
大阪城は、豊臣秀吉によって築かれた名城であり、幾度もの戦乱と再建を経て今に至る、大阪人にとって特別な存在です。
その存在を「近くにあるが故に当たり前」と思っていたことに、改めて気づかされました。
歴史と自然が見事に融合した空間である大阪城公園を、もっと大切に、もっと有効に活用していくべきだと感じさせられました。
城内をゆっくりと歩いた後、私たちは大阪城の近くにある母校・追手門学院の正門を訪れました。
たまたま通りかかった際に、警備員の方にお願いして、正門前で記念写真を撮らせていただきました。
懐かしい校舎を背に並ぶ仲間たちの笑顔に、学生時代の思い出が蘇ってきました。
年月は流れましたが、心の中の母校への想いは色褪せることがありません。
その後、天神橋筋東商店街に足を伸ばしました。
この商店街は、日本一長いといわれるアーケード商店街で、実際に歩いてみると、その長さを初めて実感しました。
スタートから端まで、延々と続く商店の数に圧倒され、雑貨や食料品、洋服、古書店、居酒屋まで、あらゆるものが手に入る、まさに“なんでもある”通りでした。
通りを歩くうちに、「ああ、ここが大阪商人の原点なのだ」と自然と認識させられました。
大阪は「天下の台所」と称されるほど、商いの町として栄えてきました。その原点が、このような日常に根差した商店街に今も息づいているのです。
商店街の終わりに、思いがけず出会ったのが「大阪くらしの今昔館」でした。
このミュージアムは、江戸時代から昭和初期にかけての大阪の暮らしを再現した施設です。
中に入ると、昔の町並みや家屋が丁寧に再現され、そこに暮らす人々の様子が生き生きと伝わってきました。
私たちは、まるでタイムスリップしたかのような感覚を覚え、昔懐かしい生活道具に触れながら、あの頃の生活を思い出しました。
特に印象的だったのは、来館者の中に多くの外国人観光客がいたことです。
日本の生活文化に対する関心の高さを感じるとともに、大阪が国際都市として注目されていることを実感しました。
ミュージアムを後にした私たちは、再び足を進め、淀川沿いを歩いて「毛馬の閘門(けまのこうもん)」に到着しました。
ここは、川の水量を調整して船の通航を可能にする水門施設で、大阪の水運を支える重要な場所です。
この毛馬の地は、俳人・与謝野蕪村の生誕地とされており、私自身も以前、この地域で俳句大学の学長を務めさせていただいたことがあります。
毛馬では多くの俳人と交流し、句会や勉強会を開催した思い出が蘇りました。
静かに流れる川のほとりで、自然と対話しながら詠んだ一句一句が、今も心に残っています。
そこからさらに歩みを進めて、いよいよハイキングの最終目的地である城北公園へ。
広々としたこの公園の中には、「城北菖蒲園(しろきたしょうぶえん)」という美しい場所があります。
今回、私は初めてこの菖蒲園に足を踏み入れました。
そこに広がっていたのは、見事なまでに咲き誇る花菖蒲の景色でした。
白や紫、薄青や黄色など、色とりどりの菖蒲が何百種と咲き揃い、まさに花の絨毯のよう。
日常を忘れて見入ってしまうほどの美しさでした。
私たち素人は、すべてを「ショウブ」とひとくくりにしてしまいがちですが、
実際には「アヤメ科」の中に、「アヤメ」「ハナショウブ」「カキツバタ」といった異なる種類があることを、この機会に学びました。
それぞれの特徴も興味深く、アヤメは乾いた土地に咲き、カキツバタは湿地に、
花菖蒲はその中間的な環境を好むなど、植物にも生育環境に応じた個性があることに驚かされました。
一見似たような花々でも、それぞれが独自の魅力をもって咲き誇っている。
人間社会にも通じる、深い示唆を与えてくれる光景でした。
こうして、私たちのハイキングは、自然と歴史、そして懐かしい記憶に包まれた充実の一日となりました。
特に今回の旅での最大の収穫は、「ショウブの奥深さを知ったこと」と言っても過言ではありません。
多様な個性をもって咲く菖蒲のように、私たち一人ひとりも、自分の個性を大切にしながら、豊かで実りある人生を歩んでいきたいものです。
仲間と共に歩いたこの日が、これからの人生の糧になることを願って・・・。
2025年6月7日 弁護士 川原俊明