相続放棄は取り消せるのか? ~「やっぱり相続したい」は認められる? 救済の可能性を解説します~

弁護士 川原俊明


「亡くなった父には借金があると聞いていたので相続放棄をした。」

ところが、その後になって、

・多額の預貯金が見つかった
・売却価値の高い不動産があった
・借金はほとんどなかった
・他の相続人から事実と異なる説明を受けていた

という事情が判明し、

 「放棄しなければよかった」

 と後悔される方がおられます。

 では、一度家庭裁判所で受理された相続放棄は取り消すことができるのでしょうか。
今回は、相続放棄の取消しについて、法律上の仕組みを分かりやすく解説します。

 

相続放棄とは?

相続放棄とは、相続人が「初めから相続人でなかったもの」とみなされる制度です。

 民法939条は、

 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。

 と定めています。

 そのため、相続放棄をすると、

預金を受け取る権利
・不動産を取得する権利
・株式などの財産

 だけでなく、

 ・借金
・保証債務

 などの負債も一切承継しません。

 非常に強力な制度であるため、法律は簡単に撤回できない仕組みにしています。

  原則として相続放棄は撤回できない

 民法919条1項は、

 相続の承認及び放棄は、第915条第1項の期間内でも撤回することができない。

 と規定しています。

 つまり、

「やっぱりやめます」
「考え直しました」

 という理由だけでは撤回できません。
 家庭裁判所に受理された時点で、原則として確定するのです。

例外的に取消しが認められる場合

もっとも、法律は一定の場合に限り取消しを認めています。

 民法919条2項は、

 ・詐欺
・強迫
・未成年者の同意欠如
・成年被後見人の行為
・制限行為能力に関する問題

 などの場合には取消しが可能であると定めています。

 

 事例① 他の相続人から騙された場合

 例えば、兄から

 「父には借金しかない」

と言われて相続放棄をしたところ、

後日、多額の預金や株式が存在していたことが判明したケースです。

もし兄が意図的に財産を隠していたのであれば、「詐欺」に該当する可能性があります。
この場合は相続放棄取消しの余地があります。

 

事例② 脅されて放棄した場合

 例えば、

 「放棄しなければ家族に迷惑をかけるぞ」
 「放棄しないなら親族関係を断絶する」

 などと脅迫され、やむなく放棄したケースです。

 このような場合は「強迫」による取消しが問題となります。
もっとも、単なる説得や圧力では足りず、自由な意思決定ができない程度の強い強迫が必要です。

 

事例③ 未成年者が単独で放棄した場合

未成年者が法定代理人の同意を得ずに相続放棄を行った場合には、取消しが認められる可能性があります。
家庭裁判所が受理した後であっても、民法上の取消権が問題となります。

 単なる勘違いでは難しい

 相談で最も多いのは、

「財産がないと思っていた」
「もっと調査すればよかった」

 というケースです。

 しかし、単なる調査不足や判断ミスだけでは取消しは極めて困難です。

 例えば、

・不動産評価を誤った
・後から高額財産が見つかった
相続税対策を勘違いしていた 

といった事情だけでは、原則として取消しは認められません。

 法律は相続放棄の安定性を重視しているからです。

取消しには期間制限がある

 相続放棄の取消権は永久に認められるわけではありません。

 民法919条3項により、

追認できる時から6か月以内
・放棄の時から10年以内

 という期間制限があります。

 そのため、

 「騙されていたことに気付いた」

 場合には早急な対応が必要です。

まずは専門家に相談を

 相続放棄は非常に重要な手続です。

 一度受理されると、

 「後悔したから」
「財産が見つかったから」

 という理由だけでは覆せません。

 しかし、

・他の相続人から騙されていた
財産を隠されていた
強迫を受けていた
手続能力に問題があった

という場合には、取消しが認められる可能性があります。

 当事務所でも、

「放棄すべきかどうか」
「放棄したが取り消せないか」
「相続財産が後から見つかった」

といった相談を数多く取り扱っています。

 相続放棄は、たった一枚の申述書で人生を大きく左右する手続です。

 「もう遅いだろう」と諦める前に、一度専門家へご相談ください。

 適切な調査と法的検討によって、思わぬ解決の道が開けることも少なくありません。

 

すべては、あなたの笑顔のために。

弁護士法人川原総合法律事務所がお手伝いいたします。